ぼちぼちダイアリー

とにかくなんか書いてみよう!

遅く起きた日には

私は早起きが苦手。早起きにあこがれがあって、試してみたこともあるけど、どうにも続かない。確かに早起きをすると気持ちがいい。「早起きは三文の得」というように、早起きができた日は1日が長くて、得をした気持ちになる。でも、夜更かしの習性がやめられず、早起きが続かないのだった。

思えば、子どもの頃から早起きは苦手だった。小学校時代の夏休みは、毎朝6時に起きてラジオ体操に行かなくてはならないのが苦痛だった。世の中では早起きが美徳とされているので、私は早起きができない自分をダメ人間だと思っていた。いえ、今もちょっとそう思っている。

ここ最近もそんな日が続いている。早起きができなかった日に、よく思い出すものがある。それは、子供の頃に大好きだったドイツの児童文学『大どろぼうホッツェンプロッツ』のこと。主人公はカスパーとゼッペルという2人の少年。大好きなおばあさんのコーヒー引きを大どろぼうのホッツェンプロッツに盗まれて、それを取り戻すために2人が冒険をする物語だ。3部作で、続編に『大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる』『大どろぼうホッツェンプロッツ三たびあらわる』がある(小粋な題名!)。NHKで人形劇が放送されていて、劇中歌は今もぼんやりと覚えている。

大どろぼうホッツェンプロッツ

そのシリーズの中に、シュロッターベッツ夫人という占い師のおばさんが出てくるんだけど、この人の登場の仕方が子供心に衝撃だった。なぜかというと、この人はものすごい寝坊助なのだった。主人公の少年たちが助けを求めて夫人のもとを訪ねるんだけど、何度も呼び鈴を鳴らしても出てこない。ようやく出てきたと思ったら、昼間だというのに寝間着を着ている。「早く、早く」とせかされても、たしかのんびりとタバコなど吸っていた(私の記憶で書いているので、少し違う部分があるかもしれないけど)。超マイペース、だらしなくて、ミステリアス。小学生がお手本にしてはいけない見本のような大人だった。

でも私はこのシュロッターベッツ夫人がとても好きだった。子供の読み物に、こんなだらしない人物が登場して、しかもそのだらしないところが肯定も否定もされていないことに、私はなんだかホッとした。こういう人がいてもいいんだと、自分が世界に受け入れられたような気持になった。そう思うと、世界は安心で安全になった。

大人になった今も、起きるのが昼近くになったり、着替えるのがめんどくさくてパジャマのままでいたい自分を責めたくなったときに、私もついにシュロッターベッツ夫人みたいな大人になったなあと思う。まあ、そういう人がいてもいいよね、と。そう思いながら、結局ノロノロと着替えるんだけどね。

大どろぼうホッツェンプロッツ、なつかしいな。横浜に住んでいた小学生の頃、1つ上の兄の歯並びがめちゃめちゃで、歯列矯正のために父が兄を新宿の歯医者さんに定期的に連れて行っていた。ホッツェンプロッツは、我慢したごほうびにと、歯医者さんに行くたびに兄が好きな本を1冊ずつ買ってもらっていたものだった。きっと紀伊國屋書店だったんだろうな。兄が読み終わった新しい本を、次に読ませてもらうのがとても楽しみだった。ほかにもドリトル先生などを買ってもらっていたように思う。

明日からいよいよ6月になる。世間では学校も始まるし、私も気持ちを新たに、朝はもう少し早く起きるようにしたいと思う。

 

写真は今日の夕空。雲の流れにどこか劇画チックな迫力がある。f:id:Hikaco:20200531231542j:plain